「…っ!」
「折れてないだけマシだろ」
「…そ、ですね」
「僕が連れて来たわけでもないのに、これだけですんで良かったな…お前」
「連れて…?」
「はい、終わりっと。お前、お茶飲むか?」
「え?」
「お茶だよ、お茶。僕が飲むついでにいれてやる」
「…ありがとうございます。頂きます」
ぺこりと頭を下げれば、ウサギ耳の彼は救急箱を手に姿を消した。
どこの誰だかもわからない人間の手当てをしてくれただけじゃなく、お茶も出してくれるのか。
ひょっとしてここは、ウサギの国とかだったりするのだろうか。
話がやや一方通行な気がしなくもないけど…いい人?いいウサギ?なんだろう…多分。
どうにも不確定要素ばかりあって、頭がうまく回らない。
手当てして貰った足には真っ白な包帯が巻かれている。
その上に手を置いてみたけれど、さっきみたいな熱は感じない。
けれど、指で強く押せば、ズキリとした痛みに目を細めてしまう。
「痛いってことは…生きてるんだ」
「当たり前だろ」
「…っ!?」
「ほら、お茶」
「あ、ありがとう…」
独り言を聞かれたことに戸惑いつつ、ごまかすようお茶を一口飲む。
優しい香りのお茶
確かこれは、ダージリン…
よく、一緒に飲ん………
「…なっ、なんだよ」
「え?」
「あーもー、なんだってこんなのが来たんだ!!」
「?」
ウサギ耳の彼が立ち上がり、慌てて何かを持ってきた。
「ほら、拭け」
「え、あたし、零しました?」
「違うよ!お前、泣いてるだろ!涙拭けって言ってるんだよ!」
「………え」
お茶を机においてタオルを受け取り、頬に手を添えてみれば…彼の言うとおり、確かに濡れている。
しかもその水は、とめどなく溢れているようで、次から次へと膝へ落ちていく。
「…どうして」
「僕が知るわけないだろ」
「あたし…死んだ、んじゃないの?…それなのに、どうして…こんな……」
零れる涙を拭おうと、手の甲を顔に寄せた瞬間…腕についていたモノがしゃらりと音を立て、自然と視線がそちらへ動く。
忘れない…
忘れられない…
ワスレタクテ
セカイ ヲ ステ タ ノ ニ
「いっ、いやあああああああっ!!!」
――― プレゼントだよ ―――
Are you Alice? - blot. #03
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